株式投資と市場研究の兜町通信   鈴田孝史

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zoom RSS 外人投資家が売り越しに転換、危険信号が点灯か

<<   作成日時 : 2014/12/03 10:46   >>

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日経平均は今年10月半ば、外人投資家が売り基調を強めたこともあり約14500万円まで下落。それが日銀の追加金融緩和とGPIFの日本株保有枠の拡大もあり、一転して上昇に変わった。外人が売りを仕掛けようとしていた矢先だけに、虚を突かれて慌てて買い戻しに入ったこともあり、大幅高となったが、日銀の発表は10月31日の13時過ぎだったので、個人投資家は知らない人が多かっただろう。しかも、3連休の前だっただけに、「日銀ショック」は、広く伝わるとともに、翌週の市場活性化にも寄与した。日銀の作戦勝ち、といったところだろう。

そして、日経平均は、17500円前後まで駆け上がったが、11月後半は利食い売りに押されてもみ合いとなっていた。
ところが、11月27日のOPEC総会で原油価格が下落しているにもかかわらず、生産枠を維持すると決めたことから、原油はさらに下落。それが無資源国家、日本には好材料だとして28日から再び株価は上昇した。今日、3日の午前10時すぎ、日経平均は、いぜんとして大幅に上昇している。また、円安で企業業績がよくなるともはやしている。円安で、食品などの原材料を輸入する企業にとっては逆風だし、食品の値上げで、一般国民にとっては、マイナス面もあるが、それらは無視というのが兜町流でもある。

牽強付会の面はあるものの、いわば、日本にとっては、ラッキーな材料が続いた。選挙を前にした安倍政権にとっても追い風となった。消費増税の先送りを支持する声は高くとも、それだからと言って、解散、総選挙をする必要はなし、との声も強いので、新聞が報道しているように自民党にとり有利な結果となるかどうかはわからないが、外人も選挙が終わるまでは様子見になると見られていた。「見られていた」、と過去形にしたのは、危険信号がともり始めた兆候があるからだ。

その理由を語る前に注意しなければならないのは、「ヘッジファンド清算相次ぎ09年以降で最悪に、解約が中小を襲う」(ブルームバーグ、12月1日)という現象だ。その一日前には、運用資産額370億ドルのヘッジファンド、プレバン・ハワード・アセット・マネジメントが商品ヘッジファンドを清算すると報じられた。運用成績がマイナスとなったためだ。
 今年前半だけで、461のヘッジファンドが閉鎖された。昨年一年間の閉鎖件数は904だが、今年はそれを上回り、09年以来の最多件数を更新するのが確実視されている。米最大のカリフォルニア職員退職年金基金は、来年15年からヘッジファンドでの運用から完全撤退すると表明。そのため、他の州の年金も追随している。

来年もまた、閉鎖されるファンド数は増加傾向になる、とみられる。
ブルームバーグの調査では、平均的なファンドの運用利回りはプラス2%。投資額の2%の手数料を取られるので、利回りがマイナスにならなかったとしても、一銭の利益もない。中には、原油の空売りで好成績を上げたファンドもあるが、そのようなところは例外。

そもそも、シェールオイル、ガス会の社をつぶすために、原油下落を狙っているので、さらなる下落もあるだろう。
OPECの産油国は原油が噴き出す「自噴型」だが、シェールオイルやガスは頁岩に穴をあけ、その上で吸引しなければならない。また、1年の採掘で、採取量が大幅に減少するため、コストがかかる。損益分岐点には諸説あるが、1バレル当たり50−60ドルと見られている。原油価格が60ドル割れとなれば、破綻するシェール関連企業が続出しよう。欧米の資源会社が撤退したり、日本でも巨額の特別損失を計上した企業もあるが、破綻が本格化するのは、これからだろう。
 
すでに、シェール関連の投資をしている企業が資金調達をしようとしても、難しくなっているとも報じられている。もちろん、関連ファンドの破たんもあるだろう。余談だが、米国は、シェール関連企業を救うために、中東での紛争を本格化させて原油価格の下落を防ごうとするのではないのか、と見る向きもある。いずれにしろ、ファンドへの逆風は強まるばかりだ。

また、世界最大の債券運用ファンド・PIMCOから最大で3500億ドルの資金が引き上げられるかもしれないと見られているのは、著名なビル・グロース氏が同社を退社したからだけではない。やはり運用難に陥っている。
日本では、年金の株式、海外債券の運用額を増加させたが、世界的には、縮小、撤退の方向にある。日本は、大けがをするだろう。

原油安で、資源国、ロシア、カナダ、オーストラリアなどの通貨と株式が下落したが、ファンドなどの資金が流失するだけでなく、空売りをかけて叩くファンドもあろう。
また、銀行の健全化のために、リスクのあるファンドへの投資は、制限される方向にある。ファンドの資金量は、今後、減少傾向となるのは当然だろう。
その様な環境下でも運用成績を高めるために、原油の空売りのように「売り叩き」が増加しよう。ギリシャ、スペインなどがファンドの攻撃を受けたが、遠くは、アジア通貨危機でも同じだ。上昇時よりも、下落時の方が短期で儲けられる。「水に落ちた犬は叩け」というわけだが、叩く前にはバブルを演出すれば、叩く効果はより大きくなる。

1980年代後半の日本市場で、外資系証券会社などが、日経平均を押し上げやすい銘柄に集中投資して、1990年から売り叩きに転じたのも同様の手口だ。その手法については、日本証券研究所に所属していた安達氏が研究論文を発表している。当ブログでも触れたことがあるので省略するが、相場の世界には、権謀術数が渦巻いている。

さて、日本の株式市場は、いくら「貯蓄から投資へ」と呼びかけても、低金利であっても預貯金中心であるのは変わらないが、それどころか、株式を長期保有していた人たちさえも売り逃げている。株価が上昇すれば、絶好に売り逃げ時となる。

昨年の11月と12月には、個人は約2兆円の売り越し。わずか2か月間で約4兆円を売り越した。それでも日経平均が上昇したのは、外人が大幅な買い越しを続けたからだ。
ところが、今年1月からは売り越しに転じたため、下落した。

東証の売買シェアは、約70%が外人、個人は、約20%前後まで低下している。しかも、個人の約70%は、信用取引だから、原則として長期保有はあり得ない。もし、外人が売り越しとなれば、一気に市場は沈む。
期待するのは、日銀による上場投信(ETF)と信託銀行を通した年金資金の買いぐらいだ。

ところで、日本経済新聞は「上場投信残高、初の10兆円に、追加緩和で」(12月1日)との記事で、10兆円のうち「日銀の保有額は国内ETFの5割超になったとみられる」と報じだが、日銀が株価を支えている実体が露わになった。いや、証券会社や投資家は、地合いが悪化すれば、日銀や年金資金で支えてくれる、と期待することになってしまった。「期待と失望」、「楽観と悲観」は表裏一体であり、いわゆる「双頭の戦略」を駆使して、市場は誘導されている。日銀が「期待」にら応えなければ、「失望」の声が高まる。それをウォールストリートの息のかかったマスコミが喧伝する。

いつもは、楽観論を振りまく日経だが、同記事の最後では、「相場全体の下支えする効果がある一方で、『適正な株価が付きにくくなる』との指摘もある」としている。

「指摘がある」のではなく、これでは、日銀による「官制相場」だとの批判の声が上がっている。
先にも触れたように、外人投資家としては、上げるだけ上げさせた後で売り叩けば、儲けも大きくなる。
今は、「その時」を待っているのだろう。

ところで、外人は、「日銀ショック」以後、それまでの売り越しから買い越しに転じた。
外人投資家の売買動向は以下の通りだ。

<海外投資家の売買推移(億円)>
――――――――― 現物 先物 合計
2014年9月第3週 2,816 5,489 8,305
2014年9月第4週 659 -661 -1
2014年10月第1週 -1,948 -8,685 -10,632
2014年10月第2週 -3,371 -4,621 -7,991
2014年10月第3週 -4,077 -7,443 -11,520
2014年10月第4週 257 -631 -374
2014年10月第5週 5,364 8,317 13,681
2014年11月第1週 7,691 14,572 22,263
2014年11月第2週 4,685 4,805 9,490
2014年11月第3週 1,318 -2,758 -1,440

11月第3週(11月17日─11月21日)の外人投資家による日本の現物株と先物合計の売買は、1440億円の売り越し(前週は9490億円の買い越し)となった。売り越しは4週ぶり。
10月の売り越し額と比べれば、それほど大きなものではない。
しかし、現物の買い越し額も縮小している。
9月の第4週を見ていただきたい。10月の売り越しに転じる前、現物の買い越し額が急減している。
そして、わずかだが、先物は売り越しに転じている。11月の第3週に似ている。

知り合いの投資家は、「選挙が終わるまでは、日銀も必死で買い支えをするだろうし、また、外人もそれを知っているので、売りを仕掛けるのは、まだ先なのではないのか」という。

だが、逆に選挙前の日銀の買い支えがある時の方が、現物3を売り逃げるには好都合だ。それは、神のみぞ知る、ことだが、いずれにしろ、外人買いに変化の兆候があり、注意信号が点灯しているのは確かだろう。

もっとも、個人は、5週間連続の売り越しで、せっせと逃げている人も多い。
なお、逆石油ショックにより株価は上昇したものの、東証一部の売買代金は、11月28日が2兆3000億円弱、12月1日が、2兆2000億円弱、2日が2兆1000億円強。昨年5月までの活況相場では、3−4兆円あったので、10月のような低迷市場の環境となっている。いわば、買い手不在の中の株高となっている。

ファンドの日本からの撤退となれば、黄色ではなく、赤信号になる。ファンドを苦しめる原油価格の暴落は、喜んでばかりはいられない。回りまわって、日本市場を直撃しかねない。


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